転職事例/出向・転籍・退職の場合

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転職事例2/資格は身を助ける

by tensyoku on 2014年4月3日

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明るい声が室内に響く。河原誠は五一歳。毎日100枚近くもの写真撮影を行うレントゲン技師である。

西原は昭和四六年に短期大学を卒業したあと、大手化学メーカーに就職した。以来、社員の健康管理の仕事に従事してきたが、妻の仕事の都合や両親の面倒を見ていることから、毎日自宅から往復で五時間もかけて通勤していた。

その問、夜間の専門学校に入学し、レントゲン技師の資格を取得した。とはいえ会社の検診では外部の技師が撮影を行うために実際に西原が撮影をすることはなかった。

そうこうするうち、健康診断を外部委託する旨の方針が出された。内原の上司を通じて人材センターに対し、同氏の活用先の相談があった。

西原も、人材センターのコンサルタントである菊池仲郎を訪ね、「通勤が楽なところで、自分の資格の活かせる出向先を探していただけませんか」と相談した。

菊池は、たまたま屋台のおでん屋で知り合った、ある病院のレントゲン技師に声をかけてみた。

「先生、うちの会社に若いレントゲン技師がいるんですよ。先生の病院か、お知り合いの病院で活用できませんかね」

「ウーン、私のところは充足しているからねえ。そうだ、赤坂にある病院を紹介しましょう」

菊池は、さっそく紹介された病院の高森先生を訪問した。すると先生は、学会誌を持ってきて、「この中に求人広告がありますので、ご覧になってください」

菊池はその中に、西原の自宅から車で三〇分程度のところにある検診センターが、レントゲン技師を募集している広告に目をとめた。

さっそく西原と検診センターヘ赴き、事務長とレントゲン技師をまじえて面接を受けることになった。

「事務長さん、私は資格は持っているんですが、撮影の経験は全然ないんです。大丈夫でしょうか?」

「西原さん、安心してください。変に癖がついていないばうがいいんです。先輩の技師さんたちが教えてくれますから大丈夫ですよ」。その言葉を聞き、西原もホッとした。

資格は持っているものの実務経験に乏しいため、最初の頃は何から何まで、教わりながら仕事をしなければならず、同じ事を何度も聞いては叱責され、その都度世回の厳しさを昧わったものだ。出向して1ヵ月が経過した頃、あまりの厳しさに元の会社への復職を考えたことすらあった。しかし、そこはスポーツで鍛えた持ち前のタフな精神で、三ヵ月、六ヵ月と辛抱するうち、いつのまにか一年が経過した。そのころになると、出向したはじめの頃が嘘のように思えてきた。

近頃は、朝は早番の人よりもずっと早く出社し、部屋の掃除、機械の掃除、ゴミの始末、機械の試運転等をして同僚の出勤を待っている。こうしたことも、嫌々やるのでは続かないだろうが、西原は非常にやりがいを感じ、職場の人たちも自分のことをよく理解してくれているように感じている。

西原の唯一の悩みは、休みが自由にとれないことだが、今は出向前に一生分の休みを取ったつもりになって、もう必要ないと思っている。

出向して早や三年を迎えるが、通勤時間が往復で一時間そこそこなのが何よりだ。毎日家族と一緒に食事し、家族に送られて出勤できることをありがたく思っている。

ある日、菊池は久しぶりに西原に会った。西原は目を輝かせながら言い切った。

「ここの人たちは、みんないい人ばかりです。残ってほしいと言われたら喜んで仕事を続けさせてもらいますよ」。五一歳、西原誠、頑張ってください!

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