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転職事例1/オーナー社長に気に入られた技術者

by tensyoku on 2014年4月2日

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「人間、万事塞翁が馬とはよく言ったものだね」

三年半前、大手の神奈川化学から、埼玉県にある樹脂加工会社へ出向した吉田英一が、久しぶりに親会社で出向先開拓、出向者フォロー担当の浜崎豪介と個別面談をしたときに最初に口にした言葉だ。

吉田英一は五五歳。二年半前、神奈川化学合併後、研究テーマが整理されたため、所属のエンジニアリングプラスチック(エンプラ)研究室から、神奈川化学から委託されて樹脂加工品を生産している現在の会社へ出向した。

氏は同社で、アイデアマンの社長が長年温めてきた耐熱性樹脂の繊維化という新規商品開発業務を担当することになった。

古田の会社生活は30年以上になるが、この問、樹脂加工技術開発、水処理技術の開発、電気電子材料探索研究、エンプラの材料開発などR&D分野(研究開発)を歩んできた。

ただ、幸いなことにこれまでの仕事で加エメーカー等との交流もあり、中小企業の雰囲気は一応理解していたところもあって、はじめてのオーナー会社への出向にもかかわらず、比較的スムーズに溶け込むことができた。

また同社には、氏のようなキャリアの持ち主がほかにおらず、文字通り社長と二人三脚で仕事を進めることができた。

社長は典型的なワンマン経営者だ。技術的な議論が大好きで、自分のアイデアを具現化してくれそうな可能性を具えた吉田を、「はじめて本物の技術屋が来てくれた!」と高く評価した。社長の方針決定が早いことも手伝って、仕事は予想以上のスピードではかどった。

同氏はしみじみと語る。「もしこのテーマを神奈川化学の研究室でやっていたら、社内調整に一年くらいかかり、あげくの果てはボツということになったかもしれない。社長が非常に積極的で、スタートして三ヵ月で商品化の目途が立ち、現在最後の仕上げ段階に来ているんだ」

さらに、「社長から『この会社のオリジナル商品をつくる』とハッパをかけられ、夢中でやってきた。お金も、この規模の会社にしてはふんだんに使わせてもらった。商品化の過程で、世界でも五本の指に入るような化学会社の技術者と議論する場にも何度か出て彼等と対等に渡りあえたと思っているし、とにかく、毎日の生活にはりがある。ここまでは社長に完璧に乗せられてきてしまった」と嬉しそうに笑った。

実はこの出向のとき、社長と吉田の面接に立ち会った浜崎は、奇異な面接だと感じた。

吉田が自分の経歴を一通り紹介したあとに、社長が、専門用語を用いた質問を幾つか出し、それに対して吉田はぶっきらぼうに応じた。

さらに社長が説明しているとき吉田は、腕組みして、「ふんふん、あ、そう。」というふうに馴れ馴れしく相づちを打っていた。

浜崎にすれば、吉田の印象は、いい年をして自分の立場をわきまえない、世間知らずな男に映った。次の日に面接を受ける際は、もう少し言葉遣いや姿勢に気配りするように注意もした。ところが本人は、あまり意に介していない様子だった。

その後しばらくして、「ぜひ来てほしいと思っている」との返事が社長からあった。

「ちょっと技術屋特有の偏りはあるけど面白い、自分に素直な人。専門知識も豊富、ハードネゴもできそう。やっと話のできる人が来てくれる」。これが社長が吉田に対して抱いた印象で、その評価はかなり高かった。

結局、浜崎の心配も杞憂に終わった。浜崎は吉田の後ろ姿を見送りながら、改めて人間関係における組み合わせの妙を感じた。

参考にしてみてください。

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