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社畜ができあがる

by tensyoku on 2016年1月6日

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91年、通産省傘下の「ゆとり社会懇談会」は中間報告をまとめましたが、経済と社会に関する認識はここでも引き継がれています。

「物質的な豊かさが充足される中で、国民は時間的なゆとりや精神的な充足度、心の豊かさといったものをより重視する方向へと変化し、近年、産業・企業の発展と国民生活の充実感との間には大きな不均衡が生じている」とし、「ゆとり社会建設に向けた企業の役割」について具体的な提言をしています。

詳細は省かざるをえませんが、「今後は、企業行動における倫理性や社会性というものがより一層幅広く、かつ、深く問われる」として、企業観を転換することの必要性を強く打ち出しているのが特徴です。

政府や中央官庁は海外の世論に敏感で、有識者を巻き込んで次々と政策提言を世に問うのが常となっています。人々の意識や社会の現実が提言の方向に向けて動き出すのには時間を要するものですが、90年を目前にするころから、有識者を中心に世論は動き出しました。

親日ないし知日派と称される海外の知識人も、「日本はおかしい」「これでよいのか日本人」というタイトルで新聞や雑誌に寄稿しました。80年代における日本は、世界の目から捉えても、尋常ではなかったのです。

日本型企業社会の転換が迫られる中で、企業と企業人もまた意識の転換を余儀なくされています。一般のビジネスマンについてもそれは同じことですが、心ある人は、先の政策提言や世論の動向がそうなる以前に、すでにして自らのあり方を点検しています。その先駆的存在ともいえるグループが、90年に『脱・ビジネスマンの挑戦』を出版しました。

メンバーが共有するのは、企業を伸ばす最大のファクターは「効率性」ではなくして「創造性」であり、自己実現型社員であるという認識です。その一人で大企業の部長職にある山本勝彦氏は、よい会社に入り、より高い収入や地位を求める上昇志向の人を「ビジネスマン」と呼び、単なる月給取りであるサラリーマンとは一線を画すとしたうえでこう述べています。

「個を生かしながらビジネスをこなし、仕事を通して自己実現や社会貢献を果たし、あわせて自分の生活や人生を楽しむという自立した生き方、美学を持った人々」がこれからのビジネスマン像だ、と。山本氏はご自身その体現者です。

こういった発言からイメージされる会社員像は、会社人間や仕事人間という。日本で表現される会社員像とは、大きくかけ離れています。「会社のためなら、家庭や友だちづきあいは多少犠牲にしても精一杯がんばる」、あるいは「仕事や会社での生活に生きがいを感じる」会社員とは、趣が異なるようです。

90年前後から「社畜」という用語がしばしば使われるようになりましたが、安土敏氏によると、転職の自由のなさがサラリーマンを一つの会社の枠中に押し込め、サラリーマンを社畜化するといいます。

自分の会社以外の世界を知らず、自分の会社の中での昇進のみに興味を持ち、話題は会社内の人々の噂だけ。こうなると、もう会社から離れては生きていけず、まるで家畜のようなサラリーマン、いわば社畜ができあがるというのです。

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